そして、それから1ヶ月。
「はーい・・・・・あ、博士。」
「すまんのぉ、コナンはおるかな?」
「はい、ちょっと待ってくださいね。
コナンくーん、阿笠博士が来てるわよーっ」
「はーい」
2階からとたとたと音がして、コナンが階段を降りてきた。
「博士、どうしたの?」
「ちょっと見せたいものがあるんじゃ。
蘭さん、コナンを借りていくぞ。」
「はい。
コナン君、遅くなっちゃ駄目よ。」
「はーい。」
コナンは阿笠に手を引かれ、事務所を出た。
阿笠はコナンの手を引いてポアロに入った。
「なんだよ、近いんだから博士ん家に行けばいーじゃねーか」
「バーロー、本人とばったり会ったらどうすんだよ」
阿笠は歳に合わない若い声で、コナンに笑いかけた。
「え・・・・・キッド?」
「正解。」
近寄ってきたウェイトレスにコーヒーを2つ頼んで、キッドは息をついた。
「いきなりどうしたんだ?」
「この間の礼をしに来てやったんじゃねーか。」
「1ヶ月経ってるけど・・・・」
「色々忙しくってな。」
キッドはコーヒーをブラックのまま口をつけた。
「・・・・・どうでもいいけど、変装解けよ。」
「え・・・・・うーん、そうだな。じゃあ」
阿笠の姿をしたキッドはトイレに入ると、高校生の姿で出てきた。
コナンもよく知っている顔・・・・服部平次の顔である。
「な・・・なんで服部なんだよ!」
「知ってる顔で、話しやすくていいだろ?」
「もっと別のにしろよ・・・・・」
「んなこと言ったって、ここだと工藤新一になるわけにもいかねーし・・・・・しゃーねー。」
ふと気付くと、そこにいるのは知らない人物だった。
顔が自分に似ている気がする・・・・コナンはそう思って見つめた。
「これでいいだろ?」
新一に似た顔が、新一に似た声でそう言った。
「まさか、俺のアレンジじゃ・・・・」
「んなことするか!これが素顔だよ!」
にこっと笑うキッドの顔は、そこらにいるただの高校生だった。
「そんで、なんだよ、用は。」
「とりあえず、礼を言いにな。」
コーヒーをすすりながら、キッド・・・・・・・いや、黒羽快斗は笑って見せた。
「名誉はちゃんと守られたよ。サンキュ。」
「いや、俺だって礼を言うべきだよ。
蘭が・・・・・置き手紙には泣いてたけど、それでも、嬉しそうだった。」
「・・・・・・・・・そうか。」
快斗はほっとしたように微笑んだ。多少なりとも、罪悪感はずっと持っていたのだ。ようやく荷が降ろせたようで、気分が楽になる。
「あ、そうそう。あの三浦って奴の記事、見たか?」
コナンが思い出したかのようにそう聞くと、快斗も真面目な顔で頷いた。
「見たぜ。『キッドにあこがれて・・・・・』って言うあれだろ?
信用出来るかよ、あんなの。」
「いや、どうも本当らしいんだよ。」
「・・・・・・はぁ?」
快斗は思わず素っ頓狂な声を上げた。頭から信じてなかったので、コナンの言葉は意外だったのだ。
その答えも予想の内だったのか、コナンは同じ口調で続きを話した。
「キッドに憧れて憧れて・・・・・・一番近付けるキッド専任の中森の下に付いたまではよかったけど、それだけじゃ飽き足らなかったんだと。
お前、殺されるくらいに愛されてたらしいぜ。」
「っげー、かぁわいい女の子だったらともかく、あんな男に愛されたって嬉しかねーよ」
そりゃもっともだ・・・・と言う顔で、コナンが頷いた。
「自供によると、もう人の目に晒したくなかったとか、警察に捕まる前に俺が殺してやるんだとか・・・・・・・・・・言ってたって。モテるな?」
コナンがニヤリと笑うと、快斗はうんざりと頭を抱えた。
「勘弁してくれ・・・・・何が楽しくってあんなのに想われなきゃいけねーんだ?」
「まあまあ。そういう事もあるってことさ。
精々、気を付けねーとな?」
「おめーもそうだろーが、"工藤"クン?」
今度は、快斗がニヤリと笑った。
「有名人だったからな、"工藤新一"は・・・・・・・」
「・・・・・・・・・るせ。」
過去形にされて、コナンはむっとした顔をした。
それを見て快斗は楽しげに笑うと、伝票を持って立ち上がった。
「もう行くのか?」
コナンも慌てて立ち上がる。
快斗はウェイトレスに伝票と金を渡した後、再び不敵な笑みを見せ、パチンと指を鳴らした。
「え・・・・!?」
突然、入り口辺りで鳥がはばたく音がした。思わずそちらに目を向けると、真っ白な孔雀鳩が空を飛んでいた。
優雅に羽ばたきを繰り返すと、やがてある人物の指に止まった。白い、指・・・・・・・
「キッド・・・・・・・」
白の衣装に身を包み、優雅な動きで鳩を肩に乗せる。
コナンが目を離した一瞬の隙に、彼はそこに現れていた。
「・・・・・今日は失礼するぜ、名探偵。
次に会う時には、敵として・・・・・・一流の舞台の上で、会おうぜ。」
柔らかな微笑を湛えて優美な動きで礼をすると、怪盗の姿は煙とともに消えてしまった。
「・・・・・・・・・あいっかわらずキザ・・・・・・。
大体、何しに来たんだ、あいつは・・・・・」
コナンはぽつりと呟いて立ちすくんだ。
「お客様・・・・・・お釣・・・・・・・」
呆然としているウェイトレスは、それでも営業を忘れてはいない。
コナンは店を出た。
今日も、嫌になるほどいい天気だった。
fin.
後書き。
いいのか、こんなことで・・・・・・・
内容が全然ないって、やべーんじゃねーか、俺!?
しかも、趣味に走るだけ走っといて、オチつけるのが嫌になってるし(^^;)
まとまりがなく長い小説・・・・・・サイテー(爆)
・・・・・・・・・でも、終わってよかった(苦笑)
1999,7,27 脱稿
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