運命など、誰が決めるのだ。
住む世界など、誰が決めたのだ。
ある宇宙のある星雲には、
ワーランドという星があって、
少年が一人、住んでいた。
ある宇宙のある星雲には、
地球という星があって、
少女が一人、住んでいた。
星と星は気の遠くなるほど離れていて、
光の百万倍で進む宇宙船が出来たとしたって、
少年と少女は、会えるはずもなかった。
ところが。
少年と少女は出会ってしまった。
少年の失敗した、魔法によって。
「おい、お前の名は?」
少年は言った。
「え、え?」
少女は聞き返した。
「言葉もわからない山猿か?
お前の名は?と聞いたんだ」
少年はぶきらっぽうにそう言った。
そんな言い方しか、知らなかった。
「失礼ね、わかるわよ。
あたしの名前は藤原芽衣。
あんたの名前は?」
少女はつっけんどんにそう言った。
少女の国では、そんな言い方が流行りだった。
「口の聞き方を知らないやつだな。
俺の名は、キール=セリアン」
少年と少女は互いの名を知った。
それが少女の、
ワーランド生活の第一歩。
少年は少女の保護者になった。
偶然使った少年の魔法は、
すぐにもう一度使えない。
少女はその世界で暮らしながら、
知らなかった魔法を覚えた。
そうして暮らして半年経った。
お姫様や騎士の卵と仲良くなった少女。
少女は魔法に強くなり、
それを聞いた王子様が頼みごとをしに来た。
「となりの国との国境で、
おかしな兵器が作られた。
行って調べてくれないか?」
少年は反対をした。
「ちょっと待ってください。
こいつにそれは無理ですよ」
しかし彼女はこう言った。
「OK!いいわよ、面白そう。
ただ飯食らいも飽きてきたし、
そろそろ恩を返したいじゃない」
少女は好奇心が強かった。
少女は若い騎士と二人、
となりの国まで出かけていった。
ちょちょいのちょいで、
少女は一人の兵士を倒した。
兵士から聞いた情報により、
戦争をせずに国は平和になった。
王子は喜んで礼を言おうと思った。
ところが、だ。
「あたし、帰れるみたい。
向こうから、あたしの世界の音が聞こえるの」
少女は突然そう言った。
騎士は止めた。
お姫様も止めた。
でも、少年は悲しい顔でこう言った。
「帰るために努力をしてきたなら、
そうしたほうがいい。
俺が呼び出したのが事の発端だからな。
すまなかった」
少年が謝ったのを、少女は初めて聞いた。
少女は、にっこり笑って手を振った。
少女は、地球に帰った。
少年は少女の消えた場所で一人、
涙をこぼした。
少女が家に帰ると、父さんや母さんが
涙を流して喜んだ。
ところが少女はにっこり笑うと、
「ただいま」
それだけ言った。
夜になって少女は、
星のまたたく夜空を見つめた。
遠い遠い世界。
遠い遠い星。
少女ははじめて涙をこぼした。
「これが運命だったんだよ」
誰かが言った。
「住む世界が違ったんだね」
他の誰かが言った。
「あるべきものは、あるべきところに。
すべて元に戻った。これが運命」
他の誰かがそう言った。
運命など、誰が決めたのだ。
住む世界など、誰が決めるのだ。
少年と少女の胸の中に、
はっきりとした影を残して、
すべては元に戻った。
その影が消えるのは、
少年と少女がまた出会う、
次の話のとき。
二人がまた出会うのも、
運命なのだ。
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